レビュー「ケーキの切れない非行少年たち」

 

またまた書評です。 

感動すると、つい人に伝えたくなるタイプです(笑)

 

 

個人的にすごい本でした。

 

読んでよかった。 

というか、知ってよかった。

 

 

病院に勤めていたころに、 

ホームレスの健康調査のボランティアに

参加したことがある。

 

その時の調査結果では、 

調査対象となったホームレスのうち

62%の方に知的障害または精神障害、

あるいはその両方の障害がみられた。

  

障害があるにも関わらず、 

人生のどの段階においても

適切な支援を受けることができず、

結果としてホームレスになってしまった人が 

かなりの割合で存在することが明らかになった。

 

 

この本では、それと全く同じことを言っている。

 

犯罪を犯して少年院に入院している少年に 

かなりの割合で知的障害または境界知能が

見られるという見解。

 

 

だけど、彼らはそのことに気づかれもせず、 

ただ勉強嫌いなやる気のない子とか

言うことを聞かない悪い子といった評価をされ、 

また多くの場合、コミュニケーションが苦手ゆえ

いじめの対象にされてしまっている。

 

  

怒りや悲しみや悔しさなどのマイナス感情を 

どんどん溜め込み、

健全な発散の仕方を知らないために、

非行や犯罪の形で表出してしまう。

 

  

知能が十分ではないために、 

先を見通して判断するとか、

複数の選択肢の中から適切なものを選ぶとか、

そういう思考が働かないだけでなく、 

見る力や聞く力が十分に発達していないがゆえに

認知のゆがみが発生して、 

物事の捉え方がそもそも間違っていることも。

 

 

もちろん、知能以外の要素も関係しているだろうし、 

だから罪を犯しても仕方ないとかいう話でもない。

 

でも、適切な支援を受けられていれば、 

罪を犯さずにすんだ少年もいるのは間違いないだろう。

 

  

その子らしさを尊重することとか 

発達段階に見合ったサポートをするとか

どの子にとっても大切な要素は

発達や知能の凸凹が大きい子ほど重要。

 

自分の特性を、自分も周りもよく理解して 

必要な助けを上手に得ながら

自分らしく生きていく力をつけること。

  

それを学ぶのが学校だと私は思っている。 

学校でそれを取りこぼしてしまった代償が

ホームレスや犯罪につながるなんて

あまりにも切ない。

 

 

学校で働く者として、この現状は知っておくべきだと思った。 

すべての先生の課題図書になったらいいのに。

  

 

福祉と教育の共通の課題。 

できることをひとつずつ考えていきたい。